18年ぶりに日本で暮らしてみて思うこと 家編

 18年もあったら、オギャーとこの世に生まれてきてから、車の免許が取りに行けるようになる年頃まで成長できる年月ですよね。長い。

 ブルースくらいしか自信を持って弾けなかった当時19歳のジャズの虜になったオタッキーな田舎娘が、ボストンでの学生生活を終えた後、ニューヨークに移り住みました。あんなことやこんなことを経験し、結婚をして、家族と共にこの度18年ぶりに日本での暮らしをスタートさせました。生活が落ち着いてきた今(コロナウイルスで本当に落ち着いたとは言えないけど)、何を感じているか、ちょっと書いてみます。

 帰国してからはギグもなかったので、今はほぼ90%くらい家事をしています。

 朝起きて、まずトイレ。そう、トイレ。ブルックリンの前の家は古くて、陽当たりもあまりよくはない家でした。すきま風に天井も高いものだから寒い寒い。トイレなんてとっても寒くて、冬場外がマイナス10数度の時の便座は罰ゲームのようにヒンヤリ。座った瞬間、全身に鳥肌が立ちます。

ところが、そう。日本のウォシュレット。便座まで温めてくれるなんて、なんて心遣い。それが我が家にあって毎日お尻を暖かく迎えてくれるなんて!感動です。

 次に私がやることは、洗濯を回すこと。NYに住む人たちはよくわかると思うけど、ランドリーに何日ぶんの家族の洗濯物をサンタさんのように持っていかなくてもいいんですよ!洗濯物入れて洗剤入れて『ぴ!』ってやれば。我が家も子供が生まれてからは内緒で小さい洗濯機を導入していたので、ランドリーに行く機会は少なかったですが、洗濯機の使用による水漏れを嫌がる大家にバレないようにヒソヒソしているのが肩身狭い思いして嫌でした。しかも水漏れしないようにうちでは毎回バケツを2個使って水を組み入れてバスタブから排水していました。あの肩身の狭い、毎日のバケツリレーのような生活が、気持ちよく『ぴ!』になったわけです。

 そしてキッチンに行くと、ふんわりいい匂いが。昨日仕込んでおいたホームベーカリーから焼きたてのパンが出来上がっているのです。新鮮な卵で作った目玉焼きと、新ジャガをきつね色にソテーしたもの、季節の緑の葉物野菜を塩胡椒で炒めたものをフレッシュコーヒーとともに。。。

ある朝は納豆ご飯に生卵、ほうれん草の胡麻和えと味噌汁と。なんて贅沢。。。してこなかったんだ?NYで!考えてみたらNYでもできたことだけど。やっぱり心の余裕が違うのでしょうか。

 でも食材の違いはやっぱり大きいと思います。納豆が今まで払っていた半分以下の値段で買えたり、味噌が、だしが、などなど、、、。使いたい食材がどこでもすぐに手に入るのが違いです。今までは地下鉄でで小一時間いったところにある日本食材屋まで仕入れに行っていました。買いたい食材も高くて買わないことも多々あったし、近くのスーパーで買えるもので代用したり。慣れてしまって気づかないことも多いけど、いろいろ工夫して料理していたんだな、と気づきました。海外に住むみなさん、みんな頑張ってますね。涙

 こうしている中、洗濯機は家族の服を綺麗に洗濯してくれたので干すわけです。うちは山の方なので、ベランダから山を見ながら美味しい空気を深呼吸してシジュウカラやウグイスの声を聞きながら洗濯物を干していきます。つい先月までは山桜が。今は新緑の鮮やかな黄緑色で山が覆われています。

ついでに布団も干して。乾いた服はお日様の匂いがします。布団なんかフワフワで程よくあったかくて布団を部屋に入れるタイミングで必ず子供達がそれを嗅ぎつけてやってきます。思いっきりふかふかの布団にダイブして気持ち良さそう。今までは布団なんて外に干せなかったし、洗濯物も基本的に外に干すことができなかったので、生乾きの服をヘアドライヤーやアイロンで乾かしたり、湿った布団に布団乾燥機かけたり、試行錯誤していました。それと比べると今はなんて恵まれているんだろう。

 買い物もオンラインで注文しています。うちは食材に少しこだわりがあるので、家族に紹介してもらった「生活クラブ」で一週間分の食材を買いだめ。他より割高かもしれないけど、美味しいし、ポリシーが好きなので利用しています。プラス足りないものはスーパーへたまに行く。くらいで済ましています。ピンポーン!とお兄さんが新鮮で美味しい、しかも地球に優しい食材を家まで届けてくれるので最高ですね。しかもこのご時世に。助かります。

 憧れのぬか漬けにも挑戦しています。キュウリのぬか漬けを朝、おにぎりと一緒に食べるのは最高です。隣の家から採りたての筍をいただいて筍ご飯を作ったり。

 お風呂は自動洗浄。ですが、さすがにそれくらいは自分でやらせてくださいと、自分で洗っています。それでも親切なお風呂さんはボタン一つでお風呂を沸かしてくれて、沸いたらお知らせしてくれて、それで一定の温度に保ってくれます。これは私が日本にいた頃から実家ではそうでしたが、アメリカ暮らし18年を経てみると、なんて進歩したお風呂文化だろうと思います。間違えなく世界ナンバーワンだろうな。

 でもやはりNYも恋しいです。あんなにレベルの高い音楽が集まっているのはあの街だけだと思います。あの一生懸命生きている街。アンテナが常に張っているような場所。今からすると、不便もたくさんあった生活だったけどあの頃があったから今、ここで自分が今の生活に感謝を覚えるというのもあるのかな、と思います。久しぶりに映画を英語でみたら、その夜の夢にはNYの友達がたくさん出てきました。英語を聞いたら私のチャンネルがNYにチューニングされたのでしょうか。

 先日家族を乗せて車を運転しながらふと思ったのですが(運転免許すら持っていなかったので)、去年の今頃に今ここにいる自分が想像できていたか。人生わからないものですね。

それがまたおもしろい。