音楽の秋、ベースとの出会い

音楽に、子育てに追われていたらあっという間に時が経ってしまいました。もう秋も深くなってきて、ニューヨークは落ち葉でいっぱいです。大統領選後でかなり世間はざわついていますが、阿部家は今日も元気いっぱいやっています。 先月末に娘が2歳になりました。生まれたばかりの頃は小さくって痩せっぽっちで、黄疸が出ていたので心配をしましたが、家族の中で一番丈夫な子で生まれてまだ2度(1度は突発性発疹)しか風邪をひいていない健康でありがたい子です。数ヶ月前まで「おっかさん…」と小さな声でささやいていたのが嘘のように今では「おかーーーさーーん!!!」と用もないのに叫ばれます。毎日ニコニコ暴れ回る彼女を見ては笑顔になる毎日です。 後、先月末、大事な出会いがありました。わたしの師匠が付き添って下さり、ロングアイランドにあるコルスタインというベースストアへ行ってこれから運命を共にする伴侶と出会いました。実は金銭的にも心も全然準備もできていなくて成り行きでお店に行ったのですが、お店に向かう時はお見合い(なんてしたことないけど)する時のような気分でなんだかすごくドキドキしていました。 お店に着くとなんの飾り気もないお店にベースがズラーーっと。もうここで運命の出会いがあると確信していました。そのお店には昔スコット・ラファロが使っていたベースやパーシー・ヒースが使っていた高価な楽器が金庫に大切に保管してありました。わたしの予算に合うベースをいくつか出してきてもらった瞬間、一本目のベースでこれだ!と運命のベースに出会ってしまいました。そのあとはどれを弾いてもなんだかしっくりきませんでした。その後しばらくして、師匠の息子さんの青森朋也さん(本当にバケモノみたいにすごいベーシスト)が一年間弾き込んで最近置いて行ったという同じ型のベースを弾いてみてビックリ!全く同じベースなのに音が全く違うんです。もの凄く鳴る楽器なので恐れ多い気持ちでしたが、師匠がこっちが久里子さんにぴったりだ、と言って下さり、そのベースに決定しました。わたしがあんなにいい楽器弾きこなせるのだろうかと思うほどでしたが、弾いていると楽器がいろいろ教えてくれている感じがしました。ピッチがズレたらすぐわかるし、ちゃんと鳴れば凄くいい反応が返ってくる、素晴らしい楽器です。これから楽器にいろいろ鍛えてもらえそうです。写真は私の長年使っていたプライウッドのベースと最後のお別れの図。ボストンで学生時代に出会い、レンタルしていて買い取ったベース。まさかこんなに長い付き合いになるなんて思ってもいませんでした。もうボロボロで壊れかかってて最後まで頑張ってくれました。母からはよくプロが中古の軽自動車ずっと乗っているようなものだ、と言われていた楽器。これからは第二の人生を歩むことになるようです。やっぱり別れる時は少し切なかったです。でもこれがこれから人生を共に歩んでいくベースです。一目惚れです。楽器って本当にパーソナルなもので、仕事のパートナー、一緒にアートを作り上げていく道具であり、自分の表現を映し出してくれる道具でもあるし、ミュージシャンによっては楽器に名前をつけている人も少なくないみたいです。わたしたちもなんだか新しい家族を迎え入れたようで毎日新鮮な気持ちです。あかりも同伴してくれたので、毎日楽器を眺めてはベース、買った!とちゃんと理解しているようです。これからもっと楽しくなりそうです!この楽器とただいま来月控えた今年最大のコンサート、ベートーヴェンの第9の練習に励んでいます。一時間もあるのにそのなかにぎゅーっと感動が詰め込まれている誰もが知る音楽界の大作。ベートーヴェンの第9が凄すぎて、ブラームスは交響曲第1番を完成させるのに20年近くかかったとか。第9ができた当時は弾きこなせるミュージシャン達もなかなかいなかったくらい難しい楽曲らしいです。ベースパートも今までやった楽曲の中でもありえないくらい難しいです。マエストロ・ペレスの指揮で第9を演奏できるなんて貴重な体験をしてきます。今からワクワクしてます。頑張るぞ!!