バイバイ、モンスターズ 手術日記 その2

 ついに手術が翌日に迫った6月11日。医者から夜の12時以降飲食は禁止といわれたので11時50分に最後のコップ一杯の水を飲んだ瞬間、手術への覚悟も決まりました。ここから手術が終わるまで何も口に出来ないのか、不思議な気分。 病院のチェックインは朝の6時なので翌朝は5時起きです。こんなに朝早く外を出るのは飛行機に乗るときくらい。案外たくさんの人が歩いていた。地下鉄に乗ってマンハッタンのアッパーイーストにある病院へ。クイーンズからマンハッタンへ出るとまだ薄暗く立ち並ぶお店のシャッターもまだ閉まっていました。そんな見慣れない街並を横目にわたしの気分も緊張から吹っ切れたのか、ひんやりした空気が清々しくも感じました。 病院に到着してチェックインを済ませ、カーテンで仕切られた部屋に通されて患者用のガウンと靴下を渡されて着替えるように言われ、中をあけてみるとアメリカのドラマや映画でよく見るような患者用のガウンが!まさかこれを自分が切るようになるとは思いもしませんでした。まだ全然痛くも痒くもなかったので余裕でした。問診が終わると手首に自分の名前と誕生日とバーコードが書かれたタグを付けられ自分が商品にでもなった気分に。 これはアメリカと日本の病院と違うのかどうかわからないけど、手術前に続々と今日お世話になる人たちが私のベッドの前に現れて紹介をされました。「こちらはドクター○○。ナイストゥミーチュー」「こちらはナースの○○さん。ハーイ」みたいな感じで5、6人くらいかな。知らない人ばかりに囲まれて訳が分からなくなっていたところになじみのあるわたしの手術を担当してくれる主治医のF先生が明るい声で「ハーイ!!具合はどお?」ってハグをしてくれホッとしました。F先生はきれいでまっすぐな目が印象的な女医さん。何一つ人を不安にさせることを言わずに患者の心まで元気にしてくれるくらいの先生です。この先生なら任せられると思わせてくれたから緊張もしなかったのかも。今回は全身麻酔で腹腔鏡下手術でおなかに小さい穴を4つ開けて行うとF先生から手術の内容を詳しく説明を受けました。片方ののう腫が大きいのでもしかしたら片方の卵巣を取ることになるかもしれないけど、なるべく救えるようにがんばるから!と先生が心強い一言を言ってくれました。 時間になって付き添いで来てくれた大輔と別れ、ちょっと心細くなったけどついに来たか!この時が!もうドキドキもしませんでした。 金髪のナースに「じゃあ行きましょう。」と言われ私はドラマみたいにてっきりガラガラとベッドのまま運ばれると思いきや、普通に歩いて手術室へ向かうことに。なんだかムードがないなあ。手術室への道には忙しそうにカルテを持って早歩きをするナースやたった今帝王切開で生まれたばかりの赤ちゃんをだいて嬉しそうな人などいろんなドラマがありました。 なんて周囲を観察している間に自分がお世話になる手術室へ到着。ドアを開けると研修医を合わせて10人くらいはいたでしょうか。こんなに大勢の人にお世話になるんだなーと関心する暇もなくまたさっきのように一人一人紹介される。部屋はまさにテレビで見る手術室。大きなライトが5つくらいバンバンバン!とついていてそこに照らされている私がさばかれるまな板。(まさにそんな感じでした) 早速横になりさっきナースに開けてもらった左腕の穴からなにやら薬を注入され、大きな眼鏡をかけた男の先生が「麻酔の前にリラックスをさせる薬を入れたからね」とその「ね」が聞こえた瞬間からウワってくるくらい目が回り始め先生に「目が〜回ります〜」って伝えたらよし、効いてる、効いてるみたいな感じで先生がまるで麻薬の密売人のようにも見えてしまいました。先生ごめんなさい!でも全て初体験なんだもん!そんなクルクルしている間に麻酔医が到着してそのリラックスする薬から麻酔に切り替えられ、顔を覆ってしまうくらい大きな酸素マスクを付けられ呼吸に困って2、3回深呼吸をしてその大きな眼鏡の男の先生が「よし、よし」と私のほっぺたを2回ほどなでてくれたのが最後の記憶でした。さあ、4時間の大手術を終え目を覚ましたらどうなっていたでしょうか。次回に続く。